スラムダンクを語る上で、最強は誰なのか。
一度は考えたことはありませんか?
その問いの答えに、陵南の仙道彰と、海南の牧紳一は、必ず名前が挙がる2人だと思います。
2人は高校生ながら、NBA(世界最高峰のバスケットボールリーグ)選手並のプレーを連発します。
そのため、単に作中のシーンだけで比較するのは難しいです。
高校、大学と日本トップリーグを経験し、現在は現役実業団選手である私が経験をもとに、少し違った視点で比較し、解説していきます。
結論からいうと、仙道の方が最強です。その理由を、解説していきます。
特徴
まず最初に、2人の人物紹介と特徴です。
▼牧 紳一
学年 身長 体重 ポジション
3年生 184㎝ 79kg PG(ポイントガード)
インターハイ17年連続出場、昨年のインターハイではベスト4の成績を収める強豪校、海南大付属高校のキャプテンを務める牧。
「怪物」の異名で才能を認められ、「神奈川県No. 1プレイヤー」と称されています。
牧の特徴は、スピードとフィジカル。
湘北高校1のスピードを持つ宮城を抜くスピード、湘北1のフィジカルを持つ赤木にも負けないパワーを持っています。
そのスピードとフィジカルを武器に、ペネトレイト(ゴールに向かってドリブルで切り込んでいくこと)し、ファールを受けながらもシュートを決め、バスケットボールカウント(3点プレー)を量産します。
牧のペネトレイトを守ろうとディフェンスがペイントエリア内(ゴール下付近)に収縮すると、キックアウト(外角のノーマークの選手にパスをすること)から、シューターの3ポイントシュートが生まれます。
とくに海南のピュアシューター神宗一郎とのホットラインは、中から牧、外から神と言われ抑えようのない最強コンビです。
この牧を起点とした海南のオフェンスに対して、湘北の安西監督は4人で牧のペネトレイトを抑えるように指示を出します。
牧にはそれだけの価値があると言われています。
▼仙道 彰
学年 身長 体重 ポジション
2年生 190㎝ 79kg SF(スモールフォワード)
今年のインターハイ県予選の優勝候補最右翼といわれる強豪校、陵南高校のエース仙道。
作中では「天才」と称され、オフェンス、ディフェンス、全てにおいて付け入る隙のない完璧な選手です。
仙道の特徴は、オールラウンダー、つまり何でもできるところです。
1年時には1試合47得点を記録するなど、外、中どこからでも得点を量産します。
また、周りを活かすアシストが上手く、魅せるパスで観るものを魅了します。
「さあ行こうか」「まだあわてるような時間じゃない」という名言がありますが、仙道はSFでありながら、ゲームコントロールをするPG(ポイントガード)までこなすことができます。
作中では、仙道の能力を最大限引き出すポジションは、PGと評価されています。
また、作中からは、ディフェンス力の高さも垣間見えます。
湘北の流川や海南の牧など、各校のエース陣が攻めあぐむシーンが当たり前のように描かれています。
また、ブロックにスティールとスタッツにも表れる活躍もしています。
どこからでも得点をすることができ、ゲームコントロールをする。
さらにディフェンスもトップクラス。
まさに「天才」です。
2人とも日本代表クラスの実力を兼ね備えています。
また、チームの精神的な柱であり、監督・チームメイトからも厚い信頼を置かれる存在です。
さらに、バスケIQが高く、試合中の一瞬の判断力や相手選手の洞察力が優れています。
個人的には、作中の2人の直接対決では、チームとしては海南が勝ちましたが、個人としては仙道の勝ちだと思います。
しかし、2人はポジションも違うため、それだけでどちらが最強か判断するのは難しいです。
作品から読み取れる実力を比較するというよりかは、現実的な観点から比較してみました。
二人がもし現代バスケにいたら
2022年に日本のプロバスケットリーグ、Bリーグのファイナルが行われました。優勝したのは宇都宮ブレックス。
スターティングメンバーのPGは、身長185㎝の鵤誠司選手が務めていました。
ファイナルの対戦チームのPGは身長176㎝であり、鵤選手は日本バスケにおいては長身のPGといえます。
PG同士のマッチアップでありながら、ミスマッチ(身長のサイズ差を利用して攻めること)をつかれ、鵤選手のゴール下付近での得点シーンが多く、そこを起点に周りの選手の得点に繋がるプレーが多く見られました。
また、2021年に開催された東京オリンピックでは、日本代表のスターティングメンバーのPGは田中大貴選手が務めていました。
田中選手は、身長192㎝、本来のポジションはSGで、自チームではエースを任される点取屋です。
長身のPGを起用する、PGのできる他ポジションの選手をPGとして起用する。
このように現代の日本バスケは、世界に対抗するためにPGの大型化が進んでいます。
あくまでこれはそのチーム事情によって異なりますし、純正のPGの需要がなくなったというわけではありません。
以上のこと踏まえると、現代バスケにおいては、SFからPGまでこなせる仙道の方が、重宝されるでしょう。
試合の対戦相手や時間帯によって、さらにチーム事情によって柔軟に起用することができます。
将来性
スラムダンクは高校生を題材とした物語です。
高校卒業後には、大学、プロまたは社会人、その後もバスケ人生は続きます。
大学からのスカウトは、作中にもありましたが深体大学から赤木がスカウトされたときのように、そのときの実力に加え、将来性も選考の基準になります。
将来性とは、バスケの技術だけではなく、性格や体格など、さまざまな面で伸びしろがあることです。
2人とも現時点で日本代表クラスの実力を兼ね備えている上、高校生であるため伸びしろも十分にあります。
ポジションの面を考えると、PGの牧が今後、コンバート(ポジションが変わること)することは考えにくいです。
一方、SFの仙道は、どのポジションが最適で、チームそして個人の実力を最大限引き出すことができるのか、模索していくことができます。
また、読者のみなさまも努力の牧、才能の仙道というイメージがあると思います。
才能の仙道に、今以上の努力が加わったら、さらに現在、牧は3年生、仙道は2年生ということからも、仙道の方が将来性が高いと考えます。
欠点
作中において、陵南の試合シーンは、最初の湘北との練習試合があり、海南の試合より1試合多く描かれています。
試合数が多い仙道ですが、試合中の大きなミスはとくに描かれていません。
一方、牧は勝敗に関わる致命的なミスがいくつかありましたので解説します。
牧のディフェンス
牧はPGでありながら、どこからでもブロックに飛んできて、相手選手のシュートをはたき落とします。
基本リングから一番遠い位置にいるPGをマークしながら、ブロックに飛んでくる運動量は異常です。
また、PGでありながら湘北のインサイドの桜木、赤木を自らマークします。
そのシーンは、その時間帯のキーマンとなっている選手を自らマークしたわけですが、同じ試合で赤木の抜けた前半の残り5分頃から11点リードしているのにも関わらず、流川の連続得点で同点で前半を終えるシーンがあります。
しかし、完全にその時間帯のキーマンである流川に対して、自らマークすることはありませんでした。
また、仙道との直接対決でも、仙道に簡単なシュートを許すシーンがありました。
これらのことから、牧はインサイド選手へのディフェンスは自信があるが、アウトサイド選手へのディフェンスは自信がないと考えました。
牧のPGとしての致命的なミス
バスケットボールにおいて、PGのミスはチームにとって最もダメージが大きいです。
他の4人の選手がミスをするのとは、ミスの重みが違います。
PGはゲームをコントロールする役割があり、コート上の監督であるからです。
陵南戦では、試合終了間際、仙道にスティール(ボールをとられること)され、延長戦に突入するシーンがあります。
また、湘北がスカウティングビデオで観ていた、昨年のインターハイの準決勝、海南vs山王工業。
後半残り4分、8点差の状況でスティールされ得点を許すシーンがあります。
勝敗を大きく左右する時間帯でのPGのミスは、かなり致命的です。
チームの信頼を失ってもおかしくありません。
まとめ
以上、現実的な観点から見た、仙道と牧の比較でした。
SFからPGまでこなせるユーティリティの高い仙道の方が最強と考えました。
どんなスポーツでもポジションの違う2人を比較するのは難しいですよね。
少しマニアックな比較になりましたが、一意見として捉えてもらえればと思います。
スラムダンクを読んだことがある人もない人も、この記事があなたの一助となれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。